香川県高松市では夏から秋にかけて人々の暮らしに根づいた祭りが各地で開催されます。その中から香川県指定無形民俗文化財の「庵治の船祭り」と高松市指定無形民俗文化財の「ひょうげ祭り」を紹介しましょう。
庵治の船祭り
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高松市庵治町は庵治石の産地として知られていますが、昔ながらの漁村の風景が残るエリアでもあります。
▼庵治・牟礼
毎年旧暦6月15日の満月に近い金曜日と土曜日に庵治皇子神社で船祭りが開催されます。
漁業の海上安全と大漁祈願の願いが込められており、神輿(みこし)が船にのり約2km先の対岸のお旅所まで渡ります。
江戸時代末期の香川県の観光地を描いた「讃岐国名勝図会(さぬきのくにめいしょうずえ)」には船祭りの様子が描かれており、歴史の深さが伺えます。
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高松市歴史資料館蔵「讃岐国名勝図会 山田郡 四下」
クライマックスは土曜日の夜。
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皇子神社の下の江の浦(えのうら)には夜店が並び賑やかな雰囲気。
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午後7時30分頃、儀式を終えた神輿が神社から下りてきます。
江の浦にはだんじりの太鼓と伊勢音頭とはやしの独特のかけ声が鳴り響いています。
だんじりの担ぎ手は地元の青年団のメンバー。地元に根付いているからこその抜群の団結力。
だんじりとは神社のお祭りで奉納される太鼓台のことで、庵治の船祭りでは太鼓台のことをだんじりと呼びます。太鼓と3人の乗り子を乗せただんじりを大人30人が担ぎます。
ここからが見せ場。
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だんじりの屋根が外され、乗り子を乗せたまま垂直に立てて回転。ここまでアクロバットな演舞は瀬戸内地域で他には見られません。
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花火が夜空を鮮やかに染め、祭りは最高潮に。
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船を3艘(そう)つないだ屋台船に神輿が乗り、お旅所に向けて出発します。船は大漁旗で華やかにおめかし。
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だんじりや獅子も続き、船上で太鼓を打ち鳴らし獅子が舞いを披露。
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屋台船のちょうちんの明かりが海に映り幻想的な雰囲気。
屋台船はお旅所に到着すると、午前0時頃まで獅子舞が奉納され、再び海を渡り皇子神社へと帰ります。
漁業とともに歴史を重ねてきた庵治の船祭りを体験してみてはいかがでしょうか。
来場のご注意
・船祭りの日程は毎年異なります。
・庵治小学校が臨時駐車場になりますが、閉鎖時間をチェックしておきましょう。また渋滞が発生しますので時間に余裕を持って運転をしてください。
ひょうげ祭り
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9月の第2日曜日、高松市街から車で約30分の田んぼが広がるのどかな浅野地区でひょうげ祭りは行われます。
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ひょうきんなメイクと衣装で練り歩く、奇祭とも評される全国でも珍しい祭りです。
以前は浅野地区の小さなお祭りでしたが、近年はその珍しさが話題となり国内外から多くの観光客やカメラマンが訪れています。
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ひょうげ祭りは新池というため池を造った矢延平六(やのべへいろく)に感謝し、豊作を祝う農村の祭り。
江戸時代、このあたりの農家の人たちは水不足に悩まされていたそう。
そこで江戸時代(1670年頃)に香東川の水を引き込んで、ため池を完成させたのが平六といわれています。
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祭りの数日前、香川町ひょうげ祭り保存会の方が集まり準備をしていました。
ひょうげ祭りで使われる道具は農作物や藁(わら)や家庭用品で作られています。
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神輿はスギの葉っぱで覆われ鮮やかな緑色。
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神輿にお供するサムライ役の衣装は肥料の紙袋で作られ、頭は植物のシュロの皮で作ったまげをつけます。陣笠代わりに里芋の葉っぱを頭にのせ、腰に差した里芋の茎は刀の代わりに。立派な鍔(つば)はかぼちゃでできています。
祭りの当日、浅野地区集落研修センターから新池までの約2kmを総勢150人が行列します。
「ひょうげ」とは「ひょうげる」という言葉に由来し、おどける、ひょうきんに振る舞うという意味。
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極めつけは顔の化粧。鼻に白く筋を描き、頬には大きな赤い丸をつけ、口ひげとあごひげを黒く塗ります。
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名前の通り「ひょうげ」ながら歩く姿に見物客は自然と笑顔に。
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肥料袋の衣装が色づき始めた田んぼに映えます。
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行列の途中では鳥の羽の代わりに藁で作った奴道具を投げ合うシーンも。
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新池に到着すると祝詞(のりと)(神様への祈りの言葉)を上げて魔除けの矢が池に放たれます。
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ワッショイ、ワッショイという掛け声とともに、池の前で神輿を回転しながら勢いをつけ、一気に池に駆け込み、祭りはフィナーレへ。
見る人が楽しめるように工夫を凝らして進化してきたというひょうげ祭り。
田園風景を彩る唯一無二の奇祭に足を運んでみてください。
来場のご注意
・高松市立川東小学校が臨時駐車場になります。隣の香川総合センターより、行列の出発地点または到着地点まで無料送迎バスが運行しています。
庵治の船祭り
- 住所
- 香川県高松市庵治町王の下5916-2
- 日時
- 毎年旧暦6月15日の満月に近い金曜日と土曜日 船渡御は土曜日の19時頃
ひょうげ祭り
- 住所
- 香川県高松市浅野 香川町浅野地区集落研修センターから新池までの旧赤坂線(県道岩崎高松線)
- 日時
- 9月の第2日曜日 14:00~16:00頃
- TEL
- 087-839-2660(高松市創造都市推進局文化財課)
2020.9.15 / 庵治の船祭り