1934年に日本で最初の国立公園に指定された屋島。大きな屋根のような独特な形状や、その山上からの瀬戸内海や高松市街の眺めは多くの人々を魅了してきました。
2017年の春に屋嶋城(やしまのき)城内石垣が復元整備され、歴史的価値が再評価されています。
2022年8月、高松市のシンボルである屋島の山上に、高松市屋島山上交流拠点施設「やしまーる」がオープンしました。
屋島の自然・歴史・文化と訪れる人をつなぐ新しい拠点「やしまーる」
高松市街から屋島山上観光駐車場まで車で約30分。
駐車場から10分ほど歩くと、独創的な形をした建物が目に飛び込んできました。
「やしまーる」は屋島やその周辺地域の自然や歴史、文化などの魅力を広く発信し、これらを活用した様々な交流、学習の機会、憩いとふれあいの場を提供する施設で、瀬戸内国際芸術祭2022の作品にもなっています。
館長の中條さんの案内のもと、やしまーるを巡ってみましょう。
回廊の向こう側には外の木々や風景が透けて見えて、内にいるのに外にいるような不思議な感覚に包まれます。
やしまーるは地形の起伏と呼応するように中庭が造形され、建物は細く長く、その地形の間を流れる川のように一周しています。
敷地全体を「建築」ととらえて、周辺の自然環境に溶け込むように設計されました。
だんだんと回廊の幅が狭くなり、外の緑がぐっと近づいてきます。
木々のこずえが真横に映り、まるで森の中を散策しているよう。
回廊の幅を狭くしたり広くしたりすることで、自然と空間が区切られており、左右上下にカーブする回廊は、歩くことで自然と目線が変化して、常に新鮮で印象的な空間が体験できます。
カフェ・ショップスペースで販売している「やしまーるデザイン」があしらわれたオリジナル商品もチェックしてみて。
デザインスタジオ・UMA/design farm(大阪市、代表:原田祐馬氏)が、ガラスに映る光や瀬戸内海の波の形をモチーフにデザインしています。
カフェ・ショップスペースを抜けて、右に緩やかに曲がりながら進むと、目の前がぱっと開けました。
屋島の三大展望の一つ「獅子の霊巌」(ししのれいがん)に面した展望スペースで、やしまーるのイチオシスポット。
「獅子の霊巌」の展望台よりも一段高く、瀬戸内海の島々や春日川の扇状地に広がる高松市街が見渡せます。
「五色台に瀬戸大橋、遠くは象頭山や琴平まで見えるんですよ」と中條さん。
反対側の窓からは、流れるようにカーブする屋根が見えます。
屋根瓦には屋島の隣、牟礼町(むれちょう)・庵治町(あじちょう)で産出された庵治石(あじいし)が使われています。
地元の讃岐石材加工協同組合が製作・納入し、その数、なんと約3万枚。
光の加減によって銀色に見えたり、青みがかって見えたりと変化する表情も庵治石の魅力です。
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展示やイベント、会議も開催できる多目的ホールも備えています。
開放感のある空間で良いアイデアや新しい企画が生まれそう。
「ここを拠点にして自然の中で昆虫観察をしたり、歴史名所を巡ったり、トレッキングをしたり。やしまーるが訪れる人と屋島周辺のフィールドをつなぐような場所になるといいですね」と中條さん。
時間や季節、その日の天気によって豊かに表情を変えるやしまーる。ここで自分だけの景色を発見してみてくださいね。
日本で唯一のパノラマアート作品「屋島での夜の夢」
回廊の壁面に記された「Panorama Exhibition」の文字。ここが「屋島での夜の夢」の入り口です。
「屋島での夜の夢」は、源平合戦の「屋島の戦い」をテーマに制作されたパノラマアート作品。東京藝術大学名誉教授で現代美術家の保科豊巳(ほしなとよみ)氏の手によって、屋島に日本で唯一となるパノラマアート作品が復活しました。
パノラマアートとは、円筒形の建築物の壁面に、遠近法を用いて描かれた絵画とその前面に設置した立体物のジオラマを組み合わせることで、実際の風景のように見せる、だまし絵を発展させた空間芸術です。
日本では、西洋のパノラマ館をもとに1890年頃から全国各地に誕生して人気を博しましたが、時代とともに廃れ、各地から姿を消しました。
暗室を抜け、中に入ると、まばゆい朝日とともに馬で駆けてくる兵士たちが目に飛び込んできます。
縦5m、横40mのダイナミックな絵画は、右から左にかけて朝、昼、夜とシーンが移り変わり、それに呼応して背景に流れる波音や照明も変化します。
本展示には、日本語・英語・中文(簡体・繁体)の音声ガイドサービスがあり、外国人の方も解説を聞きながら鑑賞することができます。
鑑賞方法
- 受付でチケットを購入してください(有料)
- 入場は20分ごとの入れ替え制です
- 1回の入場者は約10人に制限しています
やしまーるとあわせて巡りたい周辺スポット
新屋島水族館
劇仕立てのイルカライブや傘をさすアザラシライブが人気の水族館。
ペンギン、カワウソ、ウミガメのえさやりが体験できるなど、生き物とのふれあいが楽しめます。
れいがん茶屋
空と海が一望できる「天空カフェ」。やしまーるの設計者・株式会社SUO周防貴之(すおうたかし)氏がリニューアルを手がけました。もともとの和風建築の趣きを生かしつつ、敷地全体を高くすることで座席から景色が眺められるようになりました。
レトロな雰囲気の商店街
香川県の特産品や手作りの民芸品を扱うお店が並ぶ、どこか懐かしい通り。
屋島名物の「かわらけ投げ」用の土器も販売しています。少し足をのばすと郷土料理の「あんもち雑煮」が通年いただけるお店もありますよ。
県木園と西尾根山頂
日本各地の県木が植樹されている珍しい自然エリア。
県木園から尾根道を南に進むと、西尾根山頂があります。屋島から南に広がる高松市街を眺められるビュースポットです。
屋島・牟礼・庵治エリアには魅力がいっぱい!
屋島山上へのアクセス
ドライブコースとしても人気な屋島。駐車場は約390台あります。
公共交通でもお越しいただけます。
▼屋島公式観光サイト「all YASHIMA」交通アクセス
高松市屋島山上交流拠点施設「やしまーる」
- 住所
- 香川県高松市屋島東町1784-6
- 営業時間
- 9:00~17:00、金・土・祝前日は9:00~21:00
- 定休日
- 火曜日(休祝日の場合は、翌平日)
- TEL
- 087-802-8466
- URL
- https://www.yashima-navi.jp/jp/yashimaru/
- 対応言語
- 日本語
バリアフリー:対応(ただし、急こう配や狭い箇所あり)館内エレベーターをご利用ください。
新屋島水族館
- 住所
- 香川県高松市屋島東町1785-1
- 営業時間
- 9:00~17:00
- 定休日
- 年中無休
- TEL
- 087-841-2678
- URL
- https://r.goope.jp/new-yashima-aq
- 対応言語
- 日本語、英語
バリアフリー:対応
れいがん茶屋
- 住所
- 香川県高松市屋島東町1784
- 営業時間
- 11:00~17:00、金・土・祝前日は11:00~21:00(予定)
- 定休日
- 火曜日
- TEL
- 087-841-9636
- URL
- https://reigan-chyaya.com/
- 対応言語
- 日本語、英語
バリアフリー:対応
2022.8.9 / 高松市屋島山上交流拠点施設「やしまーる」
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